優しい人は”憂い”を知っているから優しいのかな

(注:過去の記事読まないと話がわからないと思います)

自衛隊の特殊な空間にもだいぶ慣れたし、他部隊の人たちに変な目で見られるのも慣れた。

 

 

私の配属された部隊の近くには海も山もあった。
トンビが空を旋廻していたり、駐屯地内の草むらで子猫がじゃれて遊んでいたり、本当にほのぼのした駐屯地で幸せだった。

 

先輩も優しい人ばかりで、かなり可愛がってもらったと思う。

休憩時に「コーヒー買い行こっか」と先輩と自販機のところまでいき「はい。好きなの押し」と、よくおごって貰ったものだ。
なにか書類を書いてる時も「兄ちゃんが確認したろか~(笑)」って、いろいろ面倒を見てくれた。 

 

けど一個、不満があった。あまり危険なことはさせてもらえなかった。
「危ないけぇこっち来んさい」とか「怪我するけぇ俺がするわ」って、微妙に女子扱いされて辛かった。

 

が、私は部隊でも背が小さい方だったので車両の下にスルっともぐれるし、三トン半(←ホロのトラック)の荷台は屈まなくても歩けるサイズ。そういう場面で役に立ててたとは思う。

 


部隊に配属されてからは結構自由で、朝起きて、テレビ見ながら支度をして、朝礼に出たあと、部隊の人たちとみんなで駐屯地2~3周走って、ダッシュ数本、ストレッチした後、一度部屋に戻ってシャワーを浴び、着替えをしてから仕事をする感じ。(夕礼前もみんなで走ったり)

 

仕事内容も日によって違うので、ルーティンワークにならなくて楽しかった。
迷彩服を着てガッツリ外で仕事する日もあれば、制服を着て海外派遣系の仕事をしたり、式典の準備をしたり、銃持って夜通し警備したり、本当いろいろ。

毎月一回は山に訓練に行くのはマストだったけど。

 

教育期間中、山へ訓練に行くのはあんまり好きではなかったが、部隊に配属されてからは苦手意識が消えた。いろんな部隊と合同で何十台も車両を出して山に訓練に行く途中ですら楽しかった。
部隊配属先の班長(当時40歳)の運転する助手席によく座ったのだが、班長と私、21歳も年が違ったのに、数時間二人で居ても会話に困ることはなかった。
とりあえず優しい班長だった。山に着くまで私は助手席でずっと笑っていた気がする。

 

 

みんな優しいけど…みんなキャラ濃かったな。

 

 

7こ上の先輩は潔癖症なのか、手が汚れるとすぐアルコール消毒する…。
「よく自衛官続けていられますねw」って茶化したら「ホンマよ。俺なんで続いとんじゃろw」って自分でも自衛官してるのが不思議なようで…。
班長が「こいつ、風呂入って一番初めに洗うところ手なんよ」て笑っていたが、そんな班長はものの1~2分でバラバラになったルービックキューブの全面を揃えられるという驚異の特技を披露してくれるし、2こ上の先輩はイケメンなのに無口(クール?)で駐屯地内の女性自衛官に話かけられても「うん」とか「はい」しか喋らない。
単語で会話しなくても…と突っ込みたかったが敢えてその淡々と話している様子を見ながら私はニヤニヤしてた。

 


キャラがかぶっている人がいなくて面白かったな。

 

班長や先輩達が好きすぎて、いつも後ろをチョコチョコついて歩いてた。
高速道路のSAで先輩達がトイレに行く際も、いつもの如く後ろをついて歩いてしまい、
先輩達がそれに気付き「トイレまでついてきちゃいけんよw ○○(←私のあだ名)のトイレはあっち」と体をクルっとして女子トイレの方に連れていかれた。

 

 

女子トイレに迷彩服&迷彩の鉄帽をかぶったまま入ったら「キャー!」って騒がれてしまった…。男に間違えられた…。(しゅん…)
でも顔を見て女と気付いたらしく、「あ、すみません」とか謝られたけどね。

 

結構傷つく。

 

 

 

 

 

夜間訓練の時はライトをつけず真っ暗な中で訓練をするのだが、慣れてくると3~40m先に人が居ても同じ班の人ならシルエットと歩き方(足音)でなんとなく誰か分かる。真っ暗な天幕(←テント)で仮眠する際も隣の簡易ベッドに寝ているのが誰だかわかる。

毎日毎日 同じ班の人達見てたら暗闇でも区別できるようになった。

 

 

 

 

 

 毎日楽しいし、居心地も最高だが、ここの駐屯地の恒例行事に驚いたし『最悪』だと思ったことがある…。

 

冬に山をフル装備で4キロ全力疾走するという謎な行事(武装走)があった…。長距離走の感覚で走るんじゃなく、完全全力ダッシュ
靴はスニーカーではなく、つま先に鉄の入った訓練時の重い靴。走っている時、真っ直ぐ前に足を出さないと体の軸がぶれまくる…。
アンビ(←救急車)も待機しての行事で。私はこれが大嫌いだった…というか好きな隊員はいなかったと思う。
ゴールした瞬間に過呼吸になって倒れる人とかいて……怖かった。

とりあえず頑張ったけど。

 

 

 

 

部隊に配属されて半年くらい経った頃だろうか、剣道(自衛隊独特の剣道があるんです)の訓練要員になり、一時、他部隊の男性隊員たちと一緒に朝から晩まで訓練していた。
ありがたいことに女は私一人ではなく、同い年で同じ部隊のHもいたので、寂しくなかった。一応私達は「女」ではあるが、手加減はなしの訓練だった。

 

朝から他部隊の人たちと走ったり筋トレしたり、アップしてから防具つけて練習。
体中アザだらけになったけど自衛隊にいると基本迷彩服(長袖、長ズボン)なので、アザが出来てもバレない。


ただ、のちに松山に合宿に行ったときにこのアザで恥ずかしい思いするんだけどね。Hと一緒に。

 

 

 


このころ剣道しつつ、課業後は体育館でバドミントンをして遊ぶという体力有り余っている私だった。(今 絶対無理。死ぬ)
同じ部隊の先輩と他部隊の人と一緒に楽しんでた。

その中に一人、結構年配で、めっちゃバドミントンうまい男性がいて…。
気さくに喋ってくれるし、接しやすかった。


『どこの部隊の人だろ?』と思ったが、別に聞くほどでもないし、聞かなくても楽しいから敢えて、『どこの部隊ですか?』とは尋ねなかった。

 

だが、このバドミントンがうまい年配の男性に「今度みんなでご飯行きましょう」と言われ、その「ご飯」の時に彼が誰か分かった。

 

当日、言われた場所に行ったら、制服を着た男性がいた。
あの年配の男性。

 

その男性の制服のバッジ(星)の数を数えて気付いた…。

 


幕僚長。

 

 

 

( ゚Д゚)

 

 

 


かなり驚いた…。

 


幕僚長とその運転手に挟まれる感じで席に着いた。
バドミントンの時は緊張しなかったのに、この男性が誰かわかってしまい…変に緊張して話すのがいきなり難しくなった。


自衛隊は楽しい?先輩はいい人?」と私を心配してくださって。
「先輩が優しいから楽しいです」って返したら「そっかぁ。よかった。これからも頑張ってね」って励まし(応援?)をいただきました。
緊張しつつも2時間しっかり話して、気付いたのは、やっぱり上に立つ人は心に余裕もあるし、苦労してるから誰に対しても謙虚。


だからみんなに慕われるんだろうな…。

 

 

 

部隊に配属されて、沢山の人に可愛がってもらって、本当に幸せだった。訓練も内容だけならキツイのかもしれないけど、先輩や班長のおかげでキツさは感じなかったし、何かあればすぐ助けてくれるしで、本当に心強かった。

 

小さい頃男子に虐められて、男性が苦手だったが、男性ばかりの生活で男性は怖くないってわかったし、みんな妹みたいに可愛がってくれるしで、むしろ好きすぎていつも後ろくっついてた。

 

 

 

教育期間中に嫌な思いをしたから、こんなに有り難く思えたのかもしれない。
人の優しさっていいな~としみじみ感じた。

 

 


「優」て人が憂うって書くけど…
優しい人は憂いを知っているから、他人に優しくできるのかもね。